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みんな主役。~長文~


私は中学、高校とサッカー部でした。
テレビでサッカーを見ていると
ゴールを決めた選手は、
派手にガッツポーズをしたり、グランドを走り回ったりします。

私が、高校の時のサッカー部の時の監督は
『シュートを決めても、
ガッツポーズしたりすることは、許さんぞ』
とよく言っていました。

私は最初
『なんで、ゴール決めて、ガッツポーズしたら、いけんのやろか?
ガッツポーズぐらいしたくなろうもん、変なこと言う監督やなー』
と思いました。

しかし、監督は
『全員で守って、全員で攻めたんやけん、点が入ったんぞ。
シュート入れた人だけの力で決まったんやないんぞ
攻める人たちが主役で守る人たちが脇役や無いんぞ
みんな主役や』と言っていました。

14年前、私がカメラメーカーに勤め、
ようやく携わったカメラの試作機が完成した時の話です。
試作機ができてからは、その製品の担当者全員で、
品質のテスト、実験が始まります。 

私は温度試験を担当しました。
そのカメラはマイナス30度~プラス70度の
温度でも使用可能いう仕様でした。
マイナス30度とは国内外のスキー場などで、
プラス70度は炎天下、
車の中にカメラを置きっぱなしにした状態を想定しています。

会社のなかには温度試験室があります。
畳2畳ほどの部屋で、自由に温度や湿度を変えることが出来ます。
そこで、マイナス30度~プラス70度の温度を実現し、
カメラが機械的にも電気的にも問題なく作動し、
ちゃんと写真が撮れるか確認するのです。

初めて温度試験室を使う時、先輩に
『お前、マイナス30度とか、プラス70度で試験しよって、
もし、内側からドアが開かんようなったら、
どうするか、知っとるか?』と聞かれ、
『どうしたらいいんですか?』と言うと
『中から窓を割るんよ』
『はぁ!』
『中にハンマーがあるやろ、それで窓を割るんよ。』
『えぇ!』
『冗談抜きでドアが開かんくなったら窓割って出てこんと、
大変な事になるぞ』
試験室の中を見ると、本当に大きなハンマーが置いてありました。

私は家からスキーウェアと短パン、Tシャツを持ってきて、
マイナス30度と、プラス70度の世界で地味な試験を始めました。
チェック項目はたくさん有ります。
また、温度試験をするのは無作為に選び出した試作機10台です。
1週間近く時間がかかります。
私はマイナス30度の世界でスキーウェアを着て、
カメラをあれこれ触っているうちに

『あぁー私はなんをしよるんやろか、寒いし、手はかじかんで痛し、
こんな事する為にこの会社に入ったんやないのに。
そもそも、何で私がこんな単純作業せないけんのやろか。
カメラが好きでこの会社に入ったのに・・・
商品の企画、発案や、新しい技術の開発が
やりがいありそうでうらやましいな・・・』と私は思いました。

そして、私は、最も親しい先輩にありのまま、相談しました。
すると『お前、カメラ開発で最も重要なことは何かるか?』と言われ、
『デザインや機能じゃないですか』と言うと、
『デザインや機能より何倍も重要なのが品質や、
同じ写真は2度と撮れんとぞ、その瞬間しか撮れんとぞ、
その時にカメラが故障、不具合起こしたら、誰も責任取れんのぞ
お前は、今、温度試験室にこもっとるやろ、
それが一番、重要な仕事や』と言われました。
さらに詳しく、先輩は品質保証について話してくれました。

以前、ある営業所にお客さんが来て
『おたくのカメラで娘の結婚式を撮影したんやけど、
1枚も写っとらんやんか!どうしてくれるんか!』
と、とても興奮した口調で言ったそうです。
お子さんの晴れ姿、両親にとって、この上ない大切な思い出の日です。
その思い出となる写真が写ってなければ興奮して当たり前です。
調べてみると、そのお客さんは結婚式のためにカメラを購入し、
そのカメラに光漏れの不具合があり、
フィルムに光があたったままの状態になっていたそうです。
会社はその結婚式代を全て弁償したそうですが、
そのご両親の心情を考えるとお金で済むことではありません。

また、あるお客さんは、お年を召した両親と一緒に
エジプト旅行に行った時、
カメラのシャッターが切れなくなったと言い、
調べると、シャッターが温度変化により壊れ、
ご両親との「その瞬間、その時」の写真が撮れなかったそうです。
その時も会社はお金で済む事では無いと思いながらも、
旅行代金を弁償したそうです。

先輩はさらに
『事務的な仕事をしよる人とか、
社員食堂でうちらの昼食を作ってくれる人達がおるからこそ、
私達がカメラ開発に集中出来るんぞ、
地味な仕事とか単純な仕事とか無いんぞ』と言われました。

同じ目標に向かって走り続けるサッカー選手のように、
みんな主役です。

仕事の内容や、仕事の相手によって
心を変えたり、態度を変えたりする必要はありません。
皆様の中に
『あぁーなんで私の配属が○○部なんやろうか』
『なんで私が、どこどこ勤務なんやろうか』
などと、思ったことがある方もおられるかも知れません。
私が経験したように
『なんで私がこんな事せないけんのやろか』
『なんで私がこんな単純作業しなきゃいけんのやろか』
と思った時、この話を思い出してください。

みんなが主役であることを忘れず、
その日、その時、その瞬間を大切に生きていこうと思いました。

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